帽子について
- 2014/07/08
- 09:54
帽子についてぼうしはつばつきに限るしかもよれよれでつばは少し波うっていて眼の半分がかくれてしまうものがよいなぜならぼうしは陽射しから頭を守るものでなく女たちの哀しい修飾でもなくぼくにとってただひとつのかくれ処だから街にでれば匿名のひとが個性的な顔と頭を旗のようにおし立てて歩いているなんというまばゆさだこのように明るく在るものに死の影は見えぬそれにひきかえぼくのぼうしの下はなんという暗さだつばの下...
新古今集断想
- 2013/11/27
- 11:14
新古今集断想 藤原定家「それが俺と何の関わりがあろう? 紅の戦旗が」貴族の青年は橘を噛み蒼白たる歌帖を展げた烏帽子の形をした剥製の魂が耳もとで囁いた燈油は最後の滴りまで煮えてゐた直衣の肩は小さな崖のごとく霜を滑らせた王朝の夜天の隅で秤は序徐にかしいでゐた「否!俺の目には花も紅葉も見えぬ」彼は夜風がめくり去ろうする灰色の美学を掌でおさ へてゐた流水行雲花鳥風月がネガティブな軋みをたて...
春と修羅・序
- 2013/06/04
- 10:40
春と修羅 一 序わたくしといふ現象は仮定された有機交流電燈のひとつの青い照明です(あらゆる透明な幽霊の複合体)風景やみんなといっしょにせはしくせはしく明滅しながらいかにもたしかにともりつづける因果交流電燈のひとつの青い照明です(ひかりはたもち その電燈は失はれ)これらは二十二箇月の過去とかんずる方角から紙と鉱質インクをつらね(すべてわたくしと明滅し みんなが同時に感ずるもの)ここまでたもちつゞ...